Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
しているだろう母親のやつれた顔を想えば、足は自然谷町の方へ向いた。
さすがにいつもの出入口からようはいらず、「野瀬商会」と暖簾の出ている方からまるで質札を売りに来た男のような態度で、こっそりはいった。
店の間には誰もいなかった。
かつて時々店番をさせられ、質札を売りに来た客の応待をしていた小さなテーブルによりかかって、暫く躊躇っていたが、やがて、「御用の方はこのベルを押すこと」と無愛想な文句で貼紙されているベルを押した。
「へい――」
長くひっぱるような声がきこえて、おいでやすと、やがて母親が出て来た。客に見せる愛想笑いを顔に釘づけながら出て来たのだが、豹一の顔を見た途端、その笑がすっと崩れたが、すぐ、こんどはこぼれるばかりの嬉しい表情が泛びあがって来て、唇がわなわなとふるえ、眼に涙が来た。そして、きんきんした顔で、
「ああ、びっくりした。お前やったんか。どないしてたんや。阿呆やな。こんなところからはいって来る人があるかいな。さあ、あっちからはいらんかいな」叱りつけるように言った。
「ここからでも良えやろ」豹一はぼそんと打っ切ら棒に言った。
それで、母子の挨拶になった。