Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
ある日、軽部の留守中、日本橋の家で聞いて来たんですがと、若い男が顔を出した。
「まあ、田中の新ちゃんやないの、どないしてたの?」
もと近所に住んでいた古着屋の息子の田中新太郎で、朝鮮の聯隊に入営していたが、除隊になって昨日帰って来たところだという。何はともあれと、上るなり、
「嫁はんになったそうやな。なんで自分に黙って嫁入りしたんや」と、田中新太郎は詰問した。かつて唇を三回盗まれたことがあり、体のことがなかったのは単に機会だったと今更口惜しがっている彼の肚の中などわからぬお君は、そんな詰問は腑に落ちかねた。が、さすがに日焼けした顔に泛んでいるしょんぼりした表情を見ては、哀れを催した。天婦羅丼をとったりして、もてなしたが、彼はこんなものが食えるかと、お君の変心を怒りながら、帰ってしまった。その事を夕飯のときに軽部に話した。軽部は新聞を膝の上に拡げたままふんふんと聴いていたが、話が唇のことに触れると、いきなり、新聞がばさりと音を立て、続いて、箸、茶碗、そしてお君の頬がぴしゃりと鳴った。お君はきょとんとした顔で暫く軽部の顔を見ていたがにわかに泣声を出した。