Japanische Klassiker mit Furigana
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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
Lesen Sie 五重塔 (ごじゅうのとう) von 幸田 露伴 (こうだろはん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.316 Zeichen · 111 Bildschirme
其三十五
血を流さんなれば愍然ともこそ照覧あれと、おもいしことやら思わざりしや十兵衛自身も半分知らで、夢路をいつの間にかたどりし、七蔵にさえどこでか分れて、ここは、おお、それ、その塔なり。
上りつめたる第五層の戸を押し明けて今しもぬっと十兵衛半身あらわせば、礫を投ぐるがごとき暴雨の眼も明けさせず面を打ち、一ツ残りし耳までもちぎらんばかりに猛風の呼吸さえさせず吹きかくるに、思わず一足退きしが屈せず奮って立ち出でつ、欄を握んできっと睥めば天は五月の闇より黒く、ただ囂々たる風の音のみ宇宙に充ちて物騒がしく、さしも堅固の塔なれど虚空に高く聳えたれば、どうどうどっと風の来るたびゆらめき動きて、荒浪の上に揉まるる棚なし小舟のあわや傾覆らん風情、さすが覚悟を極めたりしもまた今さらにおもわれて、一期の大事死生の岐路と八万四千の身の毛よだたせ牙咬みしめて眼をり、いざその時はと手にして来し六分鑿の柄忘るるばかり引っ握んでぞ、天命を静かに待つとも知るや知らずや、風雨いとわず塔の周囲を幾たびとなく徘徊する、怪しの男一人ありけり。
其三十五
去る日の暴風雨は我ら生まれてから以来第一の騒ぎなりしと、常は何事に逢うても二十年前三十年前にありし例をひき出して古きを大げさに、新しきをわけもなく云い消す