Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
床の上になまなましい血のあとを形見に残しただけで、黒猫の死骸もそこには横たわっていなかった。怪鳥もどこに潜んでいるのか、その翅の音を聞かせなかった。さらに隈なく見まわすと、部屋の広さは三間四方もあるらしく、四方はすべて厚い壁で囲まれていた。かれは正面の神壇の秘密を見とどけようとして、足音を忍ばせて窺いよると、忽ち或る者につまずいてはっと息を嚥み込んだ。蝋燭の灯に透かして見ると、それは幾個かの骸骨で、人か獣か鳥かよくも判らないが、うず高く重なり合って白く黄いろく照らされていた。
神壇の扉は半ば開かれてあるので、かれは伸びあがってそっと覗くと、その奥には小さい古びた黄金の立像が祀られてあった。像はかれの曽て視たことのない奇怪なすがたで、何か一種の夜叉羅刹であろうと想像されたが、それをじっと見つめているうちに、かれはゆうべ啜った血の酔いがふたたび頭へのぼって来たようにも感じられて、思わずふらふらとよろめいて、足もとに積まれた薄気味のわるい骸骨の上に腰をおろした。そうして、夢のように男の名を呼んだ。
「采女……采女……。」
低い声も四方の壁にひびいて、蝋燭の灯も微かにゆれるかと思われた。