Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
その一刹那に、階段のあがり口の方から青白い光りが薄く流れて来て、その光りのなかに采女の立ちすがたが煙りのようにあらわれた。
「おお、采女……。」
小坂部はあわてて起き上がろうとしても、からだはしびれたようで動かなかった。采女は微かな声で言うように聞こえた。
「姫上……。」
「そなたもここに棲んでいるのか。」
「お前さまがお呼びなされば、いつでもまいりまする。」
「そばへは寄れぬか。」
「今はかないませぬ。それもやがては……。」
「やがてはそばへも寄らるるか。」
「お前さまの御修業一つで……。」
「修業とはなんの修業じゃ。」
「悪魔の業をお積みなされ。」
と言うかと思うと、采女の姿はだんだんに薄れてゆくので、小坂部はかなわぬ身をもがきながら、消えかかるそのまぼろしを追おうとする時、しずかにその肩に手を触れる者があった。かの蝙蝠か梟かと腹立たしげに見かえると、いつの間にかそこには眇目の男がほほえみながらたたずんでいた。
「われらは約束をたがえずに、采女の魂をこの世に呼び戻した。お身がここに棲んでいるかぎりは、呼べばいつでも来る。逢いたくばいつでも逢われる。どうじゃ、お身はこれでもわれらを仇とするか。