Japanische Klassiker mit Furigana
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ちきゅうとうなん
地球盗難
海野 十三
Lesen Sie 地球盗難 (ちきゅうとうなん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.072 Zeichen · 168 Bildschirme
霧の深い朝、アルプスの山にのぼると、谷の向うに雲を衝くような巨人が出るという話がある。それをよくよく調べてみると、自分の影が霧にうつっているのを巨人と勘ちがいをするのだってネ。つまり太陽は自分の後方にあるから、自分の影がどうしても前方に出来る。霧がなければ、影は見えないが、すぐ前に濃い霧があると、これが映写幕の働きのようなことをして、その上に影がうつるんだ。自分が動けば、もちろんその影も動く。その霧が目の前にあることが分っている人には、恐ろしくもなんともないが、それを知らない人はその巨人の姿がはるか向うの空間にあると思うと、莫迦に大きく見誤るのだ。それと同じことを、いま目の前に手をかざしてみても実験できるよ」
といって武夫は、右手を目の前にさしあげながら、お美代の方をみた。
「この手をこう動かしてくると、向うに見える辻川博士の洋館がすっかり隠れてしまうだろう。つまり手は近くにあるから、眼の立体角が大きくて遠くにある洋館を隠してしまうのだ。しかし遠近がハッキリしない場合、この手とあの洋館とが同じ場所に並んでいたと考える人があったらどうだろう。あの洋館のところに、洋館よりも大きい手が生えていて、それがモクモクと動いて洋館を掌のうちに隠してしまった――などと思うかも知れない。