Japanische Klassiker mit Furigana
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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
Lesen Sie 垢石釣游記 (あおいはらふじんのたいつり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.298 Zeichen · 100 Bildschirme
舟がエンジンをかけ、全速力で南方を指して走り出すと、夫人は快活に大鯛が鈎を食い込んだ時の心得を問うのである。舟眩などと言うことは、他の国の話でもあるかのように噪いでいる。
だが、本人はまだ平然として気がつかないでいるが、かねがね私が心配していたのは、婦人の舟遊に、尿意を催した時の問題である。必ず美しい額を、顰める時が来るのを予想していた。そこで、私は舟に乗り込む前に、そっと船頭に命じてこの問題の解決に備えて置いたのである。こんな細かいところへ気がついたと言うのは、実は昨年の落ち鱸釣の時に、何とも手のつけようのない釣友の悩みを見て教えられていたからだ。
と、言うのは、昨年の秋実業家の細川卯一郎君、つまり十年前の横綱大錦が、十能のような大きな掌で私をつかまえて、
「私を、釣の弟子にして下さい」
と、突然言い出したのである。
「いや、どうも……」
私は「横綱と釣」何とも不釣合の注文をつける細川君の、偉大な体躯を驚いて見上げたのであった。現役を去ってはいるが今尚体重三十四貫の肥大漢である。普通の二人半分はあろう。こんなのと同船したなら、海へはみ出されてしまうに違いない。