Japanische Klassiker mit Furigana
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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
Lesen Sie 垢石釣游記 (あおいはらふじんのたいつり) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.298 Zeichen · 100 Bildschirme
三
「私に、釣れるかしら?」
私の娘は、二、三年前から父のあとへついて釣竿を舁ぎ廻った。殊に、一昨年女学校を出てからと言うものは、偉大な身に釣服を着け、足に草鞋を結んで、奥深い溪流を盛んに探釣した。冷寂の鬼気魄に迫るような密林も意に留めず、清洌肌を刺すような溪水をも、恬然として遙渉する女らしくない娘である。
その後、葵原夫人はしばしば私のところへ来て、娘に山や溪の話を聞き、私に竿や道具のことを問うた。
三
私等父娘は、葵原夫人に溪流魚釣の指導をすることになった。
三人は、平野の青草に徂く春の懶い風が渡っている一日、会津と上州の国境に近い奥利根の支流片品川の源へ分け入った。里は、晩春であるが、ここは早春が訪れたばかりであった。山の襞に去年からの根雪が、砂ほこりを載せて残っている。溪流に、すくすくと伸びた芹の茎も茶色に出た小さな芦の若芽も冷たい風情である。
はじめての釣遊ではあったが、葵原夫人の出来は大したものであった。四、五寸から、六、七寸もあろうという形のいい山女魚を、四、五尾釣ったのである。青銀色に光る鱗の底から、小判形した十三個の斑点が、薄紫を刷いたように泛び出ている。