Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
僕は姉の言葉を皆まで聞かずに、「なに行きたいなら行かしておやんなさい。試験で頭をさんざん使った後だもの。少しは楽もさせないと身体の毒になるから」とあたかも市蔵の行動を弁護するように云った。姉は固より同じ意見だと答えた。ただ彼の健康状態が旅行に堪えるかどうかを気遣うだけだと告げた。最後に僕の見るところでは大丈夫なのかと聞いた。僕は大丈夫だと答えた。妻も大丈夫だと答えた。姉は安心というよりも、むしろ物足りない顔をした。僕は姉の使う健康という言葉が、身体に関係のない精神上の意味を有っているに違ないと考えて、腹の中で一種の苦痛を感じた。姉は僕の顔つきから直覚的に影響を受けたらしい心細さを額に刻んで、「恒さん、先刻市蔵がこちらへ上った時、何か様子の変ったところでもありゃしませんでしたかい」と聞いた。
「何そんな事があるもんですか。やっぱり普通の市蔵でさあ。ねえ御仙」
「ええちっとも違っておいでじゃありません」
「わたしもそうかと思うけれども、何だかこの間から調子が変でね」
「どんななんです」
「どんなだと云われるとまた話しようもないんだが」
「全く試験のためだよ」と僕はすぐ打ち消した。