Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
Lesen Sie 春泥・三の酉 (しゅんでい) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.075 Zeichen · 173 Bildschirme
どんな長煩いでもしたあとのように自分にもそうトボンと感じられた。それほど、かれは、その寝ている間、身もこゝろもいためつゞけた。わけもなくかれは、寂しく、味気なかった。奈落の底へでも落ちたように心細かった。どこを向いても、くらがりの、光りというものゝさして来ない、とりつき端のない感じのなかについぞいまゝで洒落にも思ったことのない一生……大切なその二度と返らない人の一生……そうしたことがいまさらのように果敢なくふり返られたりした。
「馬鹿だなァ、俺は……」
強いてかれは自分にいった。――勇気を出してわらおうとした。――が、駄目だった。――笑えなかった。――逆に、眼の中に、なぜとも知れない泪が浮んで来た……
「年だ。――つまりは年だ……」
そう思うと、泪のひまに、女房や子供の……自分だけをたよりにする女房や子供のいとしいすがたが眼さきに浮んだ。
「が、もしものことがあったら? ――俺に、いま、もしものことがあったら?」
不意にかれはうしろから羽交じめにされた。――いそいでかれはふりほどこうとした。――が、それは、かれの自分でつけた立廻りの手のように器用にそうは行かなかった。