Japanische Klassiker mit Furigana
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きょくばだんの「トッテンカン」
曲馬団の「トッテンカン」
下村 千秋
Lesen Sie 曲馬団の「トッテンカン」 (きょくばだんの「トッテンカン」) von 下村 千秋 (しもむらちあき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 16.620 Zeichen · 34 Bildschirme
十五
そのあくる朝早く、まだ東がやっと白みかけたころ、新吉は、しもふりの夏服に靴をはき、むぎわら帽をかむり、ふろしき包み一つを持って、一年間あまり住みなれたテント小屋をぬけ出しました。
新吉はそこを抜け出すとき、兄弟分のファットマンのそばへそっとしのんで行って、この一年のあいだ、新吉のためになんでもしてくれ、最後に新吉の命まで救ってくれたその長い鼻をなでながら、
「ファットマンよ、ありがとうよ。さよなら、さよなら。」と言いました。
十五
新吉は停車場へ来ると、一番列車に乗りました。そして、おひる前に新宿の停車場へ着きました。それから電車に乗り、叔父さんの家のある小石川へむかって行きました。
しかし新吉は、そこですっかり途方にくれてしまいました。叔父さんの家はどっかへ引っこしてしまって、その引っこし先もまるでわからなかったからです。
新吉は、ふろしき包みを抱いて、夢中でそこらをほっつき歩きました。歩いているうちに、広い池のはたへ出ました。そこは不忍池で、新吉はいつの間にか、そんなとこまで迷いこんで来たのです。
池の向こうに、森の繁った高台が見えました。そこは上野公園でしたが、新吉はそんなことは知りません。