Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「上意、戸外にては、申しあげかねます」
危げな沙汰とは思いましたが、いつぞやの気がかりもあり、将軍家の旨といえば、まさか、立話にも聞かれません。
「こちらへ来い」
あごで招いて錦霜軒へ引っ返します。
先に戻って、戸をあけた金吾は、さてこそ万太郎の行為がたたって、何か、尾州家に対する吉宗の凶命、いよいよやって来たかと予感をもちました。
銀泥のふすまに滅入りこむような灯が更けております。水の底かと思われるばかり森とした本丸の深殿に、吉宗はまだ起きている。
「お……参ったか」
音もなく開いた一方のふすま。
「はい、お供仕りました」
身を伏せたのは松平源次郎です。――それを目でうなずいて、
「尾州殿、私見でござる。昔の友として会いましょう。遠慮はいりませぬからどうぞこれへ」
こういった吉宗のことばは、将軍家の格式をのぞいて、紀伊の息子である元に返った口ぶりでした。
「では」と、源次郎のうしろから、つかつかとはいって来た者は、何かお召しというので、錦霜軒から導かれて来た徳川万太郎で、それを見届けた後、金吾は畳床から板廊下へ身を退きます。
「源次郎、遠慮いたせ」
吉宗は、顎で侍側を払っておいて、ひとしお懐しげにくだけました。