Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

「だって」

お蝶は、逃げも得ず去りもえずに、

「――わたしに、探せるか探せないかわかりゃあしないものを……お前。待っているなんていッたって困ッちまう」

「そ、そんな事で、どうなさいますか!」

ヨハンは思わずやッきとなって、

「きっと探せます! 私は捕われの身、この牢獄で神様に一念お祈りしています」

「いいよ、いいよ、そんなことをしていてくれなくッても」

「じゃ何の為に、あなたは山屋敷を出てゆきますか」

「命が惜しい、明るい世間に棲んでみたい。だけれどねえ、またついででもあったらば、夜光の短刀だって心がけて見るには見るけれど……」

「ちぇッ……そんな気持か」

あれほど説いて聞かした自分の誠意も、この少女には通じないのかと、ヨハンは歯がみをしてまた何か叫ぼうとしましたが、それは、あッという仰天に変りました。

ツイと、お蝶が身をひるがえして、そこを去らんとしたとたんに。

さッきから物蔭で、いさい残らず聞きすましていた道中師の伊兵衛、いきなり燕返りにお蝶のふところへ打つかッて行って、

「もったいねえ、おれがもらっておいてやる」

と、かの女の手にあった羊皮の表紙を引ったくッて、どんと、胸を突く。