Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

甲府町方奉行所

「なアるほど……」

馬春堂は番屋のそばを抜き足さし足に離れて来て、

「いやな辻占だなあ」

と首を振りうごかしました。

それですッかりおびやかされた彼は、もう伊兵衛よりスタスタと先に立って、柳町の掛小屋の裏から飛び込むように姿をかくしました。

江戸の両国や浅草とちがい、ここの繁華は夕方からなので、昼は馬糧倉のように蒸れている蓆小屋に昼寝をしている者もない。

その楽屋にさし向いとなって、

「伊兵衛、どうしたものだろう?」

と、馬春堂の心配顔。

「だから、おれはこの甲府へはいる前から、ちっとも気をゆるしちゃいなかったんだ」

「日本左衛門のやつが、こんな方まで来ているとは夢にも思わなかった。どうしてもお粂を殺してしまわなければ虫がおさまらないものとみえる」

「そればかりだと思うと大間違い、お粂ばかりじゃない、俺達の命も絶えずねらわれているのだ」

「執念ぶかい男だな」

「あいつらしい粘りかただ」

伊兵衛はくちびるを歯でしめて、

「おれたちに遺恨をもって殺そうというのじゃない。夜光の短刀――あの秘密を知っている二人が日本左衛門の気がかりになるんだ」

「じゃ、もうあのことはふッつり思い止まろうじゃないか」