Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「ばかをいやがれ」
伊兵衛はこわい眼をして馬春堂を睨みながら、
「てめえがそういう二心を抱くなら、おれが生かしちゃおかねえからそう思え」
こういう脅迫をうけるのは、今が初めてではありません。実際、馬春堂は、雲をつかむような夜光の短刀の捜索にそろそろ退屈をおぼえております。いや、その大望に熱がさめたよりも、それによって起こるいろいろな危害や苦しみの多いのに、おぞけをふるッてしまったのです。
大体、伊兵衛の望みが大きすぎて、彼の望みとつり合いのとれないところがある。王侯の暮らしの百万両になる、そんな夢みたいな希望よりは、馬春堂先生は命が無事でうまい酒がのめて女に不自由がなければそれで結構なのであります。
粂吉一座の尻馬に乗って旅興行に出てからというものは、その点だけでもめぐまれています。で、伊兵衛と一緒に苦労するのが少し、嫌気になってきたのかも知れない。
ところが、今日の風向きでは、どうやらこの一座にも悠々と長く居る事をゆるさない様子です。
万一、お粂にまちがいがあったひには、この一座はみじめな瓦解だし、お粂が助かってこっちが災難をうけたひにはなお取り返しのつかないこと。