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Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

その薬とする胆血をとるために、家付きの郷士に命をふくませて、幾多の旅人の生き胆をとられたのも、お嬢様が狛家の一つぶ種であるため。また、夜光の短刀をたずねておいで遊ばすのも、その愛児のために、より多くの幸福を残しておこうというお心なのに。

思えば、困ったことになったものです。

また、御隠家のおやしきには、いわゆる家の子と称する、狛家手飼の郷士たちも、何十人と居ることは居ます。

けれど、いずれも半農そだちの野武士であって、一朝の変に、野火をあげたり兇器をとるにはすぐれて役に立ちますが、今のような場合に、老人の心の話し相手となるようなものは、一人としてに見当らない。

おりんは、それも歯がゆく思われて、

(せめて、こんな時には、あの久米之丞でもたずねて来たら……)

と、ふだんは持つ、あのいやな性質に対する嫌忌も忘れて、その久しく訪れて来ないことをさびしく思う。

「そういえば御隠家様、あの関久米之丞はどうしたことでございましょう」

「久米之丞か」と、老人は気がなさそうに、

「久しく見えんのう」

「お嬢様がいらっしゃるうちは、毎日、うるさいように訪ねて来ておりましたが、近頃は、あのお人もすっかり姿を見せませぬ」