Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「そんな事はべつにして、ただ私の性質を話すのだよ。……実を言うとね、ヨハンや」
「はい、何か秘密なお話で」
「私は今迷っているの」
「話しておしまいなされませ。ヨハンがそのお迷いをとって上げます」
「こんどの山の旅にかかる前にね、鼻寺という所で、こういうことを囁かれたんだよ」
「誰にですか?」
「日本左衛門にさ……お前にはまだ日本語のよく分らないところがあるとみえる」
「いいえ。もう海を越えて来てから七年になります。お姫様、もすこし、ゆっくりと話していただきたいと思います」
「あのネ。……分って」
「はい。そして」
「日本左衛門が私に言ったのだよ、この手を、こう強くにぎりしめて……」
「無礼な悪魔でございますな。そして、なんと申しましたか」
「――女房にならぬかと言ったのだよ。恋をしていると言ったのだよ。あの大盗でも恋をするとみえてね……」
「えっ、お姫様に向って、恋を、あの妻にならぬかと」
「その時は、ゾッとして突き放したけれど、永い間の山駕のなかで考えてみると、そのくせ私は、あの人がすきらしい……それで迷ってしまったの」
「…………」
「ねえ、ヨハン、私はどっちが幸福になるだろう」