Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
そして後も見ずに、かもじの釣り看板の下を小走りに駆け走りました。
肌を刺す寒風がやんだかと思うと、夕方からチラチラと白いものが降って来る。
そして少し更けた頃に、高台から雪の下町を見ると、真っ白な江戸の全市に火の見櫓の灯が幾つも年の暮を見張るように灯されてあります。
「綺麗に降ること……」
飢えた眼にも美しい雪。
お蝶は湯島の額堂でふるえていました。
たった一粒身に着いていた珊瑚珠も、小間物屋に見せれば、それは練玉という紛い物だと分って、お金にはならず、腹が立つやら悲しいやらで涙も出ません。
「もし、お嬢様」
彼女が、寒々と額堂の隅にうずくまっていると、最前から、蛇の目の傘を手にさげて、雪に見とれていた一人の女が、側へ寄って来てこう声をかけました。
お嬢様――と呼ばれたので、お蝶は間が悪そうに、
「はい」と、伏し目に返事をすると、女はいろいろな事を訊いて来ます。そしてお蝶のいい加減な作りごとにホロリとさせられて、
「じゃ、私の家へおいでなさいな、小間使いが欲しいと思っているところですから、辛抱してくれる気なら、永く居てもらってもようございますが」
弓町の近くに住む、挿花の師匠だという話なので、お蝶は、ワラでもつかみたいところですから、そのまま女に尾いて行きました。