Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

成程、門には池の坊の小さい札が出ていましたが、翌晩になって分ったことは、それは弓組与力の松下という男の妾で、その松下が来て遅くまで飲んでいる。

ちょッと酒屋へ行っておくれでないか、帰りに八百屋へ寄っておくれ、それからてん屋へ何を誂えて来ておくれと、お蝶はいい重宝に使われて、寝たのもだいぶ更けてからです。

「人をばかにしている! 親切ごかしに」

彼女は腹が立って寝られない。

こういう屈辱は彼女の耐えうることではありません、――と言って此家を出れば行く先もない。まして、今夜は除夜です、明日はもう人の着飾る元日です。

今夜も此家の女主人が、松下という旦那から、春の小遣を貰ったり仕立て上がった春着を見せたりしていたのを、お蝶もチラと見ていましたが、彼女に来る春は何の幸福も齎しません。

「ああ、つまらない」

溜息をついて寝返りを打ちました。しかし、それからそれへ、悶々とした不平が数えられて、たまらない空虚が若い心をいじめつけます。

と。

お蝶は何か怖ろしいことを思い決めたように、蒲団の上に起き直りました。そして、きのう珊瑚の珠を探した時に、捨てようとして取って置いた、匂いのない匂い袋を取り出してみる。