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Japanische Klassiker mit Furigana

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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

Lesen Sie 源頼朝 (みなもとよりとも) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 306.118 Zeichen · 613 Bildschirme

Aozora Bunko

「……?」

頼朝はふと、その眸を、廂ごしの空から自分の傍らへ振向けた。よよと、孤で泣いている者があったからである。

亀の前であった。

何で、彼女が泣くか、頼朝にはわかりきっていた。政子へ使いをやった事からに違いない。もっと彼女の胸に入って云えば、なぜ、馬の代の調達を、自分へ相談してくれるなり、自分の父良橋太郎入道へなり申し遣ってくれなかったか。

それを恨みともしているであろう。また、いくら素直な性格でも、女である以上、嫉妬もあろう。それを動作やことばに出せない質だけに、泣くだけしか、表現を知らないのである。頼朝の眼は、そう知りぬいておりながら、やや険をふくんで、邪慳に云った。

「何を泣いておるか。……男の胸、女子には汲めまい。泣きたくば、あちらへ行って泣け。……暑いっ。うるさいっ」

五

泣くな、と叱られれば叱られるほど、亀の前は、泣きぬれていた。

頼朝は、舌打ちして、

「この暑さに、蝉が啼くだけでもたくさんだ。……聞きわけのない」

と、起ち上がった。

亀の前は、その袂の下へ、初めて小さい声で、咽びながら訴えた。

「しばらくの間、里方へ帰らせていただきまする」