Japanische Klassiker mit Furigana
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とおのものがたり
遠野物語
柳田 国男
Lesen Sie 遠野物語 (とおのものがたり) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.063 Zeichen · 79 Bildschirme
九三
この路は小国へ越ゆべき方角にはあらざれば、立ちとまり不審するほどに、行き過ぐると思うまもなく、はや見えずなりたり。山男よと口々に言いてみなみな遁げ帰りたりといえり。
九三 これは和野の人菊池菊蔵という者、妻は笛吹峠のあなたなる橋野より来たる者なり。この妻親里へ行きたる間に、糸蔵という五六歳の男の児病気になりたれば、昼過ぎより笛吹峠を越えて妻を連れに親里へ行きたり。名に負う六角牛の峯続きなれば山路は樹深く、ことに遠野分より栗橋分へ下らんとするあたりは、路はウドになりて両方は岨なり。日影はこの岨に隠れてあたりやや薄暗くなりたるころ、後の方より菊蔵と呼ぶ者あるに振り返りて見れば、崖の上より下を覗くものあり。顔は赭く眼の光りかがやけること前の話のごとし。お前の子はもう死んで居るぞという。この言葉を聞きて恐ろしさよりも先にはっと思いたりしが、はやその姿は見えず。急ぎ夜の中に妻を伴ないて帰りたれば、果して子は死してありき。四五年前のことなり。
○ウドとは両側高く切込みたる路のことなり。東海道の諸国にてウタウ坂・謡坂などいうはすべてかくのごとき小さき切通しのことならん。