Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 109.804 Zeichen · 225 Bildschirme
銭形平次捕物控
一
一
「八、居るか」
向柳原の叔母さんの二階に、独り者の気楽な朝寝をしている八五郎は、往来から声を掛けられて、ガバと飛起きました。
障子を細目に開けて見ると、江戸中の桜の蕾が一夜の中に膨らんで、甍の波の上に黄金色の陽炎が立ち舞うような美しい朝でした。
「あ、親分。お早う」
声を掛けたのは、まさに親分の銭形平次、寝乱れた八五郎の姿を見上げて、面白そうに、ニヤリニヤリと笑っております。
「お早うじゃないぜ、八。もう、何刻だと思う」
「そのせりふは叔母さんから聞き馴れていますよ。――何か御用で? 親分」
八五郎はあわてて平常着を引っ掛けながら、それでも減らず口を叩いているのでした。
「大変だぜ、八五郎親分。こいつは出来合いの大変と大変が違うよ。溝板をハネ返して、野良犬を蹴飛ばして、格子を二枚モロに外すほどの大変さ」
平次はそう言いながらも、一向大変らしい様子もなく、店先へ顔を出した八五郎の叔母と、長閑なあいさつを交しているのでした。
「あっしのお株を取っちゃいけません。――どうしたんです、親分」
八五郎は帯を結びながら、お勝手へ飛んで行って、チョイチョイと顔を濡らすと、もう店先へまぶしそうな顔を出しました。