Classiques japonais avec furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lisez 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 150 635 caractères · 306 écrans
石のふね
一
彼の十数年にも亙る刻苦精神が実をむすんで、心、体、理の基本を一系に統合し、ここに、柳生新陰流――なるものの大成もほぼ完うされたかと思われる頃、
「ああ。世も変った」
と、大和の一角から天下の推移に眼をうつすと、思い半ばに過ぐるものがあった。
彼が一度は扶持をうけて合力もした松永久秀は亡び、続いて、足利義昭も滅亡を遂げている。さらに、それらの旧勢力を一掃して、革新陣の先頭にあった織田信長も、本能寺一夜の兵燹裡に歿し去っている。
「いや、変ったのは、世の中ばかりではなかった……」
今さらのように、宗厳は、自分の身のまわりを顧みた。
住居は、依然として、柳生ノ庄の元の位置にあったが、彼の所領は、もう彼の手を離れて、領主の名は変っていた。
一家一族は、ここ数年、禄を離れ、放浪せざる牢人の境遇であった。
「これで三度か」
宗厳は苦笑して、自ら嘲った。
筒井順昭に敗れた時、一度、領地を失い、足利家没落と共に、二度、所領を没収された。
その後、大和に在りながら、九州の大友宗麟に属して、金子で三千石の扶持を送られてたが、その大友家が島津氏に侵略されてからは、仕送りも途断えていた。