Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lisez 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) de 小酒井 不木 (こざかいふぼく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 196 140 caractères · 396 écrans

Aozora Bunko

もしあの時、身辺に日本刀があったならば、僕は何の躊躇もなくその鞘を払って頸動脈を切ったであろう。もし又、窓の前が千仞の谷になって居たならば、有無をいわず、この身を投げたであろう。

然るに、一旦、どの方法を選ぶかということになると、もはや、日本刀の鞘を払う気にもなれなければ、千仞の谷に近よることもいやになった。共に苦痛を伴うからである。だから、僕は苦しまずに死ねる方法を考えたのだ。

苦しまずに死ねる一ばんよい方法といえば、縊死に限るということを法医学の講義できいた。縊死の際には、頸動脈が圧迫されるので、脳への血行が遮断され、それがために何の苦痛も感じないということだ。けれども、君も経験したことがあるだろう、息のつまるときの感じを。あの厭な感じが、きっと縊死には伴うだろうと僕は思うのだ。それが僕には何としても堪えられないのだ。僕は別に縊死に対して美的嫌悪を感じない。それは決して美しい姿ではないが、どんな方法で死んだところが、死の姿はさほど美しいものではないのだ。だから、特に縊死を醜いとも思わぬが、縊死する瞬間に起こるであろう苦しい感じ、いわば生き埋めの時に起こるであろうところの恐ろしさ、かの精神分析学者のいわゆる、子宮内にとじこめられて居たときに得た恐怖その恐怖感の起こるのが、如何にも忍び得ないのだ。