Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 156 866 caractères · 318 écrans
「なるほどね」
ガラッ八は長い顎を撫でました。
「それだけなら物の間違いとも思うが、――表二階の障子が一枚、裏返しになっていたのに気が付いたか」
「そう言えば、親分の倒した障子を、そのまま敷居へはめたら、骨の方が外を向いてましたね」
ガラッ八は、あの時の平次の酔態をはっきり思い出しました。
「客商売の家が、元日早々、障子を裏返しにしておくという法はないよ」
「フーム」
ガラッ八は鼻の穴をふくらませました。平次の話が次第に重大さを加えるので、そっと後ろを振り返りましたが、ここへ来るともう元日の街も思いのほか淋しく、廻礼の麻裃や、供の萌黄の風呂敷が、チラリホラリと通るだけ、両側の店も全く締めて、飾り松だけが、青々と町の風情を添えております。
「たったそれだけで、俺は素通りが出来なくなった。屠蘇機嫌といった顔で、輪飾りを引っくり返したり、障子をわざと外して、裏表を直したり、とんだ生酔の芝居をしたが、――勘定を済まして、外へ出て振り返ると――」
「…………」
「輪飾りはやはり裏返しになっていたし、二階の障子も、真ん中の一枚は、骨が外へ向いていたよ」
「ヘエ――」
「手前はそこまでは気が付かなかったろう」