Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 156 866 caractères · 318 écrans
三
「曲者ッ、御用だッ」
続いて路地の中へ、飛込む平次。
「御用だぞッ」
向うから木精するように、御用の声を掛けて、飛んで来たのは、紛れもないガラッ八の、長大な姿だったのです。
「あッ、八」
「親分」
闇の中でも、お見それ申す顔ではありません。
「曲者は?」
「知りませんよ」
「確かにこの路地に追い込んだはずだ」
二人は顔を見合せました。路地の中には犬っころ一匹居る様子もなかったのです。
三
「親分」
ガラッ八は指さしました。僅か三十間ばかりの路地の中に、灯の点いているのはたった一軒、それも入口の格子が半分開いて、ここへ逃込みましたと言わぬばかりのがあったのです。
「この家を知っているか、八」
「小田巻直次郎――で」
「悪いな」
平次も首を縮めて小さく舌打ちしました。小田巻直次郎というのは、神田一番の悪侍で、どこの藩の浪人か知りませんが、とにかく、押借、強請、喰い逃げ、喧嘩、博奕、人の嫌がる事なら、何でもやって歩くといった、とんでもない中年男だったのです。
その癖、腕前は抜群で、小田巻流を編み出して、近いうちに八間四面の道場を建て、江戸中の道場を一つ残らず叩き潰す――と、口癖のように豪語しておりました。