Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 725 caractères · 298 écrans
銭形平次捕物控
一
一
「親分。お早うございます」
「火事場の帰りかえ。八」
「ヘエ――」
「竈の中から飛出したようだせ」
銭形平次――江戸開府以来と言われた捕物の名人――と、子分の逸足、ガラッ八で通る八五郎が、鎌倉河岸でハタと顔を合せました。まだ卯刻半(七時)過ぎ、火事場帰りの人足が漸く疎らになって、石垣の上は、白々と朝霜が残っている頃です。
「ところでどこへ行きなさるんで? 親分」
「三村屋も放火だってえじゃないか」
「ヘエ。それで実は、親分をお迎えに行くところでしたよ」
「酒屋ばかり選って、立て続けに三軒も焼くのは穏やかじゃないネ」
「どこの餡コロ餅屋だか知らないが、野暮な火悪戯をしたもので――」
「馬鹿だな。そんな事を言うと、餅屋に殴られるぜ」
「ヘエ――」
ガラッ八は埃と煙で汚れた、長い顎をしゃくって見せました。
今年になってから、ほんの半月ばかりの間に、神田中だけでも三ヶ所の放火があった――最初の一つは、正月八日の夜半過ぎ、浜町の大黒屋で、これは夜廻りが見つけてボヤですましたが、二度目のは、中四日おいて正月の十三日、外神田松永町の小熊屋で、これは、着のみ着のままで飛出したほどの丸焼け、三度目は正月十八日、――正確に言えば十九日の暁方、鎌倉町の三村屋が丸焼け、そのうえ小僧が一人焼け死んで、女房のお久は、二階から飛降りて大怪我をしてしまい