Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 725 caractères · 298 écrans
二
二
東西両国は野次馬の山、役人が声を嗄らして追い散らしますが、蠅のように集まって来る群衆は、手の付けようもありません。
橋の欄干から、若くて綺麗な娘が、荒縄でブラ下げられ、胸に両刃のツルギを突っ立てて、怨み多い眼で、大川橋の方を眺めていたというのですから、物見高い江戸ッ子の神経をピリピリさしたのも無理のないことです。
「退いた退いた、見せ物じゃねえ」
ガラッ八は顎で群衆をかきわけるように、橋番所へ平次を案内しました。
欄干と水肌とのちょうど中頃にブラ下がっていた死体は、若い娘の死に恥を晒させるでもあるまいという町役人のはからいで、検屍前ですが、とにかく取り外して橋番所に運び、諸人の恣な眼から遠ざけて、八丁堀役人の出役を待ったのです。
「あ、銭形の、ちょうどよいところだ」
町役人に案内されて、死骸の前に行った平次、――形ばかりの筵を取って、
「…………」
さすがに息を呑みました。これはまた、あまりにも虐たらしい姿です。
「親分、こいつを見て驚かなかった日にゃ」
自分の仕事のように、鼻を蠢かすガラッ八。
「黙っていろ」
平次は片手拝みに、娘の死骸を弔ってから、職業的に冷静さを取り戻して、その側に片膝をつきました。