Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 725 caractères · 298 écrans
二
傷の男は膝の手を滑らせました。どこともなく睨む片眼の不気味さ。本当に、地獄の底から、その怨みを果すだけに生き還って来た、幽鬼の姿と言っても平次は疑わなかったでしょう。
「お前さんは?」
平次は顧みて伴の男に訊きました。
「私はこの方と無二の仲で、その場に居合せなかった、たった一人の人間でございます。生き還ったこの方が、第一番に私を頼って来られたのも無理はございません」
中年男は静かに言うのでした。
「誰が私を殺したか解りません――私はそれを知りたいばかりに、江戸で半歳苦労いたしました」
傷の男の態度や話振りは、真剣さが溢れて鬼気迫る思いでした。
「始めから順序を立ててお話して下さい。お前さんは一体誰で、どこで、どうして殺されかけなすったか」
あまりの奇怪さに、平次も思わず膝を進めました。
二
「何を隠しましょう。私は横山町の徳力屋千之助でございます」
「えッ、あの、去年の秋、江の島で死んだと言われた――」
平次は一ぺんに仰天しました。江の島詣の一行が、暴風雨のために桟橋が落ちて島に閉じ籠められ、そのうちの一人、徳力屋千之助が、雨の止んだ深夜の海の凄まじい様子を見物すると言って宿を脱け出し、数百尺の大断崖から落ちて、湧き返る怒濤の中に押し流され、それっきり死骸も上がらなかったという事件は、当時神田日本橋かけての噂になっ