Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 725 caractères · 298 écrans
八
まだ、驚くほどの気力も、泣くほどの気力も恢復しないのでしょう。
「大丈夫だよ留ちゃん、もう大丈夫だよ、叔母ちゃんがついているから、お泣きでないよ」
お冬はそう言いながら、留吉を抱いて、母家の方へ帰って行きます。
その後ろ姿をツクヅク見送った平次。何を考えたか、自分も母家へ取って返して、薄暗い中に蠢く人々を一応見廻すと町の人達に後の事を頼んで、追い立てられるようにサッと戸外へ飛出します。
「親分、どこへ」
後ろからガラッ八、これは下駄と草履を片跛に履いて追っかけます。
「八、お前はしばらくここにいるがいい」
「ヘエ――」
「俺は少し行って来るところがある」
「あれは一体、どうした事でしょう親分、あっしには少しも解らねえ」
「正直に言うと俺にも解らないよ」
「ヘエ――」
「八、恐ろしい事だ。いや、もっともっと恐ろしい事が起りそうで、どうもジッとしちゃいられねえような気がするんだ」
「親分、大丈夫ですかえ」
「…………」
「親分」
八
半刻ばかりの後、八丁堀組屋敷で、与力笹野新三郎の前に銭形の平次ともあろう者が、すっかり悄気返って坐っておりました。
「旦那様、これは一体どうした事でございましょう。