Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 725 caractères · 298 écrans
「誰がさきに見つけたか知りませんが、町中がハチ切れるような大騒ぎで眼が覚めました。雨戸を開けると、額が焦げるように近い火です。親爺と一緒に飛んで行ってみると、三村屋はもう表も裏も一面の火で、お町さんが見えないという騒ぎです。それから、ただ一つ火のまわらない縁側から、夢中で飛込み、煙に巻かれて、ウロウロするお町さんを見つけて、どうやらこうやら助け出しました。運が良かったのです」
周助は手柄らしくもなくそう言って、まだ恐怖の鎮まらぬらしい、お町の顔を見やるのでした。
「そいつは大手柄だ。差当り、お町さんの命の親というわけだね」
「…………」
お町はうなずいた様子でした。神田の悪戯者が娘番付を拵えて、東の関脇に据えた容色、疲れと怖れに、少し青くはなっておりますが、誰が眼にも、これは美しい娘でした。
「文治さんとか言ったね」
「ヘエ――私は、手代の文治でございます」
娘の後ろから顔を出したのは、火傷だらけの三十男、少し剽軽そうなのもあわれです。
「お前さんは、とんだ怪我をしたようだね」
「大したことはございませんが、火傷ですから、始末が悪うございます」
黄蘗か何かをうんと塗った顔、熱っぽい唇や眼など、平次は押して物を訊くのが気の毒に思うほどでした。