Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 106 caractères · 292 écrans
銭形平次捕物控
一
本篇は、銭形平次がまだ独身で活躍している頃の話です。
一
「た、助けてくれ」
若党の勇吉は、玄関の敷台へ駆け込んで眼を廻してしまいました。
八丁堀の与力笹野新三郎の役宅、主人の新三郎はその日、鈴ヶ森の磔刑に立ち会って、跡始末が遅れたものか、まだ帰らず、妻のお国は二三人の召使を供につれて、両国の川開きを見物かたがた、浜町の里方に招かれて、これもまだ帰らなかったのです。
留守宅は用人の小田島伝蔵老人と、近頃両国の水茶屋を引いて、行儀見習のために来ている、銭形平次の許嫁お静。それに主人新三郎の遠縁に当る美しい中年増のお吉、外に下女やら庭掃きやら、ほんの五六人が鳴りを鎮めて、主人夫婦の帰りを待っておりました。
そこへこの騒ぎです。
「それッ」
と飛出してみると、玄関にへた張った勇吉の背中には、主人新三郎の一粒種、とって五つの新太郎が、これも眼を廻したままおんぶしておりました。
「あッ、若様が」
「どうしたことだろう」
身分柄、贅沢な羅物を着せた、男人形のように可愛らしい新太郎を抱き取って、医者よ、薬よという騒ぎ。幸い間もなく正気付きましたが、余程ひどく怯えたものと見えて、啜り泣いたり顫えたりするばかりで、容易に口も利けません。