Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 156 866 caractères · 318 écrans
八五郎はゾッと肩を縮めました。
その晩――、亥刻(十時)少し過ぎ。
平次はガラッ八を連れて、佐久間町河岸の空地へ入って行きました。こんな広々とした場所を選んだのは、町中や林の中で、相手に逃げられるのを嫌ったためでしょう。
霧の立った夜ですが、幸い月はありました。
「八、手前は手を出しちゃならねえ、――ここで眺めているんだよ」
平次は物蔭を指さします。
「親分、今晩の相手は、物騒な奴なんでしょう」
「そうだよ」
「じゃ、あっしも一緒に逢いましょう」
ガラッ八の真剣さ。
「馬鹿な事を言え、二人でうろうろして居ようものなら、鳥が飛ぶぜ」
「ヘエ――」
「その代り、いざという時は飛んで来てくれ。俺が声を掛けるまでは、ジッとして居ることだよ。解ったか、八」
「ヘエ」
八五郎はこの辺で妥協する外はありません。
やがて亥刻半(十一時)平次は和泉橋の方へ静かに歩み寄りました。ガラッ八が隠れているところからは、十歩、二十歩、心もとなく次第に遠ざかります。
間もなく、月を踏んで、一人の覆面の武士が近づきました。
「長吉か」
「ヘエ――」
小腰を屈めたのは手拭で頬冠りをした銭形平次です。