Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九)不死の霊薬
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(九)不死の霊薬 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 106 caractères · 292 écrans
外は漆のような宵闇、小さい裸灯心は、壁の上から、わずかに手許を照すだけ、時々、徳三郎が灰吹を叩く音だけが、妙に秋らしく冴えて聞えます。
「あッ」
不意に、お静は悲鳴をあげました。
狸が真物になって、ツイ、うとうととした平次、ガバと飛起きて行って見ると、お静は流し元に崩折れて、顳を押えております。
「どうした、お静」
手を払ってみると、タラタラと流るる血潮、紅い糸を引いたように、ふくよかに顎へ垂れているではありませんか。
「どうした」
重ねて平次、お静の肩を揺すぶるようにすると、夢心地のお静は、
「外から、――外から突かれました」
黒い瞳に、初めてサッと恐怖の色が浮びました。
「どんな野郎が突いたんです」
と、この時平次の後ろから、差覗いたのは徳三郎。
「何だかちっとも見えません、あんなに外は暗いんですもの」
お静は漸く人心地づいたように、少し甘え加減に平次の顔を仰ぎました。
「眼でなくて幸せだ、格子があるんで助かったんだ。畜生ッ、いよいよ俺に仇をするつもりだな」
平次は格子の外、庭口の闇を透かしましたが、そこにはもう何にも見えません。
「徳三郎、外へ出て見ろ」