Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(二)八人芸の女

野村 胡堂

Lisez 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 562 caractères · 291 écrans

Aozora Bunko

ちょうどその時、――

「田原屋さんからお使いですよ。先ほど旦那とお約束したお薬を持って参りましたという口上で」

店に居た小僧の長六が、離屋にうろうろしている番頭の新兵衛に囁きます。

「それどころじゃないよ。薬をお願いした本人の旦那が亡くなったんだ。何とか言って帰してしまいな」

「ヘエ――」

小僧の長六が帰って行く後ろから、

「待ってくれ、小僧さん。使いの方はまだ居なさるかえ」

平次は追っかけて訊ねます。

「ヘエ――。その薬は呑みようがあるから、旦那に御目に掛って申上げると言うんです。それに手紙を持っているようですよ」

「俺が会おう」

平次は小僧をかき退けるように店へ顔を出しました。薬を持って来たというのは、十七八の中僧で、ぼんやり臆病窓の外に立っております。

「お前さんかえ。田原屋さんの使いの方は?」

と平次。

「ヘエ、――お薬はこれで、旦那の手紙が添えてあります。お薬は水で召上がって下さい。熱い湯で召上がると苦味が出ますから――とこう申しました。左様なら、お休みなさいまし」

「あ、ちょいと待ってくれ。――お前さんは確かに田原屋の奉公人だろうね」

「ヘエ――、巳之松と申します」