Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 562 caractères · 291 écrans
五
総七の死体は見るも無残でした。脳天を打たれて、首が胴へめり込むほどですから、大した傷が無くとも、目鼻口から鮮血が吹出して、四方の薄暗い中に、二た目とは見られない物凄さを漂わせております。
「何があったんだ、え?」
大きな声で四方を見廻しながら、二十七八の若い男が飛込んで来ました。先代の甥で、お粂の配偶者の菊之助です。
「お前さん、私は、私は口惜しいッ」
お粂はやにわにその胸に飛付くと、身を揉んで泣き出しました。強気で持堪えた激情が、一ぺんに破裂したのでしょう。
五
菊之助は思いの外善良な男でした。
先代の総七が甥の菊之助を疎んじて、手代の千吉(後の総七)と娘のお信を娶合せ、越前屋の跡取りにしてからは、少し自棄気味で遊び始め、時のはずみで、お粂のような鉄火者と一緒になりましたが、フトした事から、先代の総七が、菊之助のために、かなりの金を遺してあることを知ってからは、悍馬のようなお粂を宥め宥め、越前屋に帰って来て、店の仕事を手伝っていたのです。
荷扱きの仕事で、毎日昼過ぎから夕景まで、横山町の問屋仲間を廻るのが菊之助の仕事、これは総七ならずとも、皆んな知っております。