Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 144 562 caractères · 291 écrans
銭形平次捕物控
一
一
「親分、退屈だね」
「…………」
「目の覚めるような威勢のいい仕事はねえものかなア。この節のように、掻っ払いや小泥棒ばかり追っ掛け廻していた日にゃア腕が鈍って仕様がねえ」
ガラッ八の八五郎は、そんな事を言いながら、例の癖で自分の鼻ばかり気にしておりました。
「大層な事を言うぜ。八、先刻から見ていると、指を順々に鼻の穴へ突っ込んでいるようだが、拇指の番になったらどうするだろう、俺はハラハラしているぜ」
銭形平次は、早春の日向縁に寝転んだまま、こんな無駄を言っております。
「つまらねえ事を心配するんだね、親分」
「俺は苦労性さ、その指をどこで拭くか、そんなつまらねえ事まで心配しているんだよ。今晩あたりは、うけ合い、大きな鼻の穴の夢を見るよ。ウナされなきゃアいいが」
「天下泰平だなア」
「だがな八、今に面白い仕事が舞い込んで来るよ、――退屈なんてえのは、鼻の穴のでっかい人間とは縁がない代物だよ」
「へッ、いやに鼻に祟られる日だぜ」
「怒るなよ、八、仕事が舞込みかけていることだけは本当なんだ、――聞えるだろう、あの足音が――」
「なるほどね、路地の中だ」
「そんな恰好で耳を澄すのは按摩と八五郎ばかりさ、鼻の穴で物音を聞いているようだぜ」