Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 139 179 caractères · 280 écrans
専次は泣き出しそうでした。全く神田明神をめぐって人間の洪水のようなもので、その中を一刻泳ぎ廻ったところで、誰も見知り人などがあるはずもありません。
「気の毒だが、その胸の血飛沫がモノを言うから、一刻ばかりここへ寄り付かないという、確かな証人がなきゃ――」
「これは親分」
専次は自分の胸のあたりを眺めました。なるほど目立つほどではありませんが、点々として左脇腹へかけて、飛沫いた血の跡は隠しようもなかったのです。
「死骸を抱き起した時の血だって言うんだろう」
「その通りですよ、親分さん」
「死骸から付いた血なら、そんなに飛沫くはずはねえ」
「でも、お今はその時、まだ息があったんで」
「息のあるのを介抱もせずに、俯向けに投り出したというのかい」
平次の問は容赦もありません。月にさらされた惨憺たる有様を遠く眺めて、路地の外の野次馬も声を呑みました。
「人を呼んで来るつもりで、大急ぎで飛出しましたよ」
専次は出来るだけ軽やかに応答するつもりでしょう。頬のあたりに引釣ったような笑いさえ浮べますが、喉はすっかり涸れて、こういう言葉も容易には出て来ません。
「その後に勘六が来て、匕首を拾い上げて捕まったというのだな」