Classici giapponesi con furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Leggi 平の将門 (たいらのまさかど) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.193 caratteri · 463 schermate
――娘は、白い顔を、灯皿の翳に、ふと下げて、脅えるような、眸をした。
「仕舞えや。眠ろうぞよ、もう」
細工場を、片づけ、あちこち、広い家の戸じまりを、手分けして、しはじめている時だった。
土塀門を、たたく者があった。
弟子が、二人して、覗きに出た。馬のいななきが聞える。雨気をもった低い雲間に、もう夜半をすぎた月が、ぼやっと、ほの白い。
「たれだえ。……どなた?」
「梨丸です。――豊田の将門様の召使で、おとといの夜、お世話になりました、あの主従です。夜更けに、おそれいりますが」
「え。将門様ですって」
「そうです。あのときの、おことばを思い出し、これまで、急いで、戻って来ました」
「やれ。ようこそ」と、翁は、尻ごみしている弟子たちにむかい、
「はやく、小門をあけて、お通し申さぬか」
と、叱った。
やがて、梨丸が、将門を、背に負って、はいって来たのを見て、翁も媼も、初めて、顔いろを、失った。……娘は、茫然と、片すみに、立ちすくんだ。
梨丸は、馬の背に、主人をのせて、からくも、あれから水も飲まずに、野路から野路を、これまで引っ返して来たのである。驚愕してむかえる家族たちに、あらましを、無念そうに語って、将門の体のいたみが、やや癒えるまで、どうか、一室をかして下さるまいかと、頼むのであった。