Classici giapponesi con furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Leggi 平の将門 (たいらのまさかど) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.193 caratteri · 463 schermate
繭の中に
あなたは愛してくださるし……。けれどあんまり幸福で、こんな幸福な日が、いつまでつづくかと思って」
彼女はまったく幸福の繭の中にいた。しかし、豊田の館の奥ふかい所にも、何となく、世間のうわさは聴えてくる。殊には、これまでの数年が、たえず彼女の心を脅かしていた毎日であったから、繭の中に守られていても、ややもすれば、風を恐がる花のように顫くのだった。
「そんな取越し苦労はしないがいい。どうも、おまえはちと苦労性すぎるよ」
将門は、強いて、笑って、
「そういう不安は、いい替えれば、おれが余りに頼りにならない良人だと、おまえがいっていることにもなるぞ。なぜ、おれの腕につかまって生きてゆくのがそう不安なのか」
「もったいない。私は満足しきっています。――見てください。母の私の腕に、こんなに、安心しきって抱かれているこの乳のみ子のように……です」
「おお。よく寝ているね」
「やがて、あなたの、お世嗣ですのよ」
「おかしなもんだな。おれもいつか、父となったか」
「……ですから、どうぞもう、お心を練って、世間がどう騒ごうと、なにを企んで来ようと、お辛くても、じっと、堪忍してくださいましね」