Classici giapponesi con furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Leggi 玉藻の前 (たまものまえ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 130.703 caratteri · 261 schermate
と、翁は笑いながら言った。
「まだ戻らぬか」と、千枝松は失望したように翁の顔を見つめた。「関白殿の屋形へ召されて、今頃まで何をしているのかのう」
「ここから京の上まで女子の往き戻りじゃ。それだけでも相当のひまはかかろう。どうでも藻に逢いたくば、内へはいって待っていやれ。暮れるとだんだん寒うなるわ」
翁は両手をうしろに組みあわせながら、くさめを一つして簾のなかへ潜ってはいった。千枝松も黙って付いてはいると、婆は柴を炉にくべていた。
「病みあがりに朝晩出あるいて、叔母御がなんにも叱らぬかよ」と、婆はけむそうな眼をして言った。「おまえも藻にはきつい執心じゃが、末は女夫になる約束でもしたのかの」
千枝松の顔は今燃え上がった柴の火に照らされて紅くなった。彼は煙りを避けるように眼を伏せて黙っていた。
「そりゃ銘々の勝手じゃで、わしらの構うたことではないが、お前知っていやるか。この頃の藻の様子がどうも日頃とは違うている。現にこのあいだの夜もお前や爺さまにあれほどの世話を焼かせて、その明くる朝ゆき逢うても碌々に会釈もせぬ。今までのおとなしい素直な娘とはまるで人が違うたような。