Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みみずのたわこと

みみずのたはこと

徳冨 健次郎

Leggi みみずのたはこと (みみずのたわこと) di 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 265.437 caratteri · 530 schermate

Aozora Bunko

此辺には牝犬が少ないので、春秋の交尾期になると、猫程しかないピンを目がけて、来るわ/\、白君、斑君、黒君、虎君、ポインタァ君、スパニール君、美君、醜君……婿八人どころの騒ぎではない。デカも昨春までは、其一人であったが、抜群の強猛故に競走者を追払って、押入婿になり済ましたのである。今は正規の夫婿顔して、凡そ眼の届かん限り、耳の聞かん限り、一切の雄犬を屋敷の内へは入れぬ。其目一たび雄犬の影を見ようものなら、血相変えて追払う。宛ながら足の四本に止まるを憾むが如く、一口に他の犬を喰うてしまうことが出来ぬを悲しむ如く、醜の壮夫デカ君が悲鳴をあげつゝ追駈ける。其時はピンもさながらデカに義理を立てるかの如く、横合からワン/\吠えて走って行く。

最初飼った「白」は弱虫だったので、交尾期には他の強い犬に噛まれて、毎に血だらけになった。デカは強いので、滅多に敗は取らぬ。然し其悲鳴して他の雄犬を追かける声は、世にも情無げな、苦痛其ものゝ声である。弱い者素より苦み、強い者がまた苦む。生物は皆苦む。思うに惨ましく、見るに浅ましい。然し此れが自然の約束である。即ち命を捨てゝも命は自己を伝えずには措かぬ。