Classici giapponesi con furigana
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Leggi 剣難女難 (けんなんじょなん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 243.807 caratteri · 482 schermate
それを見違えるような千浪ではござりませぬ……それを、それを……知らぬとは何という情ないお言葉……」
「ああ、見っともねえ、人が助けてやりゃつけ上がって、人中で泣かれちゃ堪らねえ、何と言おうが、拙者あ春日新九郎なんて、そんな優らしい人間じゃあない。もう、女と酒に身を持ちくずして、大望も遂げ損なえば、兄者人や思う人にも、顔を合せられねえ堕地獄の人間だ、さ、離してくれ、後生だから離してくれ」
声はあやしく顫いたが、涙の顔は決して見せない。
「ま、どうしたことを仰っしゃります。新九郎様、私はどうでも……お兄上様の前で、そ、そんなことを仰っしゃられたものではござりますまい」
「ええうるせい、離せったら!」
「あッ――」
と、突き飛ばされた千浪と重蔵が、再び、起き直って見た時は、ほとんど、気狂いの走るように姿を消して行った新九郎の影がもう遥かになっていた。
その姿を、しばらくじっと見送っていた千浪は、とうとう涙の堰を切って、わッとそれへ泣き伏してしまった。
何と重蔵が宥めても賺しても、千浪の涙は止まらなかった。果ては、顔へ袖を当てたまま、二月堂の後ろへ駈け込んで、そこで、思うさま、泣いて泣いて泣きぬいた。