Classici giapponesi con furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Leggi 平の将門 (たいらのまさかど) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.193 caratteri · 463 schermate
奴婢長屋は、曲輪の遠い隅ッこで、晩には、逃げないように、空壕の橋は、外される。それに高い柵もあるのに、どうして来たのかと、小次郎は、目をまろくした。
「御子は、あした、横山ノ牧へ、行くんでしょう。そしたら、途中の武蔵野で、殺されますよ。わたしは、叔父御さまたちが、密談しているのを、床下で聞いていた……」
彼女は、一心に、小次郎を想っている。小次郎は、かの女が告げた恐ろしさより、べつなものに襲われた。すぐ取って喰べてしまいたいような衝動に駆られ、アイヌ族の特有な梨の花みたいな肌をすぐ頭にえがいた。
「……ね。ですから、ここは出ても、遠くへ行くのは、およしなさい。武蔵野は通ってはいけませんよ」
蝦夷萩は、それだけ告げると、暗い床むしろを、後退りに、出て行きかけた。
――と、小次郎の鼻に、彼女が日ごろ髪につけている猪油のにおいが、ぷうんと触れてきた。彼の影は、それを嗅ぐと、動物的に、跳びついて、香うものの焦点へ、ごしごし顔をこすりつけた。蝦夷萩は、鼻腔からひくい呻きに似た息を発し、身を仰向けに転ばして、嬉々と、十四の少年が、なすままに、まかせていた。
まだ、人間たちの間には、人間の自覚すら、ほとんど、稀薄な時代であったから、わずかに、夫婦の制度とか、妾の認知とかいう――本能と愛憎と専有欲を基とした、ごく単純な社会