후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
そのひとが、世間も何も知らずに、吉益老の仲人口を信じて、素寒貧の父へ嫁いできた事情には、どうも母の云い分の方が本当らしいものがある。母の「わたしは騙されて吉川家へ来た」という口走りにも、そのときの感情で、多少、母にも云い過ぎがあるかもしれなかったが、しかしそのつど、ヤブ井チク庵の吉益老夫婦は、母をなだめたり、母に詫びたり、ただもう平謝りが常だった。
だからどう公平に考えても、このチク庵夫婦が、世間知らずの明治娘を、ある程度、仲人口に乗せて、東京から横浜のような烈しい開港地の、しかもこれという勤めもなく、ただ甚だ特異質的なきかん気だけを持っていた一青年の所へ、嫁入り道具万端持たせて、一しょにさせたという事には、むりがあったにちがいない。母が生涯を通じての、悔いであったろうと思われる。
じっさい、子供心にも、おぼろに、そう考えて、母に同情し、母と一しょにわけもなく泣いたものだった。けれど、母の悔いにもかかわらず、この仲人口のムリな結合から、ぼくらは両親の仲に生れた。しかもぼくらは、母が生きるに疲れ果てて、燃え絶える最期まで、母からはただの一言でも、愛の伴わない言は、聞かされたことはない。