후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
母の郷里は、千葉県の佐倉で、古くは堀田相模守の領である。生家は代々その堀田藩士であった。ぼくらの童心の印象に深い“おじいさん”つまり母の父は、山上弁三郎といった。
戦争中であったが、千葉刑務所長で名物男の根田兼治氏に誘われて母の生家のあった印旛沼の上に佇み、小学校で講演したり、縁家の佐藤氏の案内で、菩提寺へ詣ったりして、一日を過したことがある。
菩提寺の山上家の墓碑は代々一基ずつ並んでいて、その古さや型からも、ほぼ家格の想像もつくのであるが、そのときも、これは母がよく愚痴をこぼしていた悔いは本当だろうと思い合せた事であり、小田原藩で五石十人扶持の小身だった父の里方とは、だいぶ趣がちがうのである。
母の父弁三郎は、廃藩後も、臼井町の町長に推されて、酒席や平常の上でも、すこぶる豪放磊落な人で、郷党たちにはひどく敬愛されていたらしい。佐倉でぼくの為に招宴を設けてくれた当夜の人々の間でも、ずいぶんいろんな逸話や思い出が語られた。
酒を愛し、郷人を愛し、いつも春風駘蕩といったような大人風な好々爺であったらしい。ぼくの母は子沢山の中の四女で、名は、いく子であった。