후리가나로 읽는 일본 고전
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川 英治의 忘れ残りの記(わすれのこりのき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 193,050자 · 383화면
「……どう、一年辛抱しない? 眼をつむって一年辛抱すれば、いい金になる。仕事は、横浜へ出す輸出物だし、君も横浜の人だしさ」と、熱心にぼくを説いた。会津訛りはあるが、下町肌で小ざッぱりした気ッぷの人だし、日頃も親切屋さんと云われている程なので、一も二もなくぼくは耳傾けて、そのすすめに動かされた。
苦学するなどという夢は、半年にして破れていた。それ以前に、ぼくは本所林町の夜間工芸学校へ志願し、すぐ許可されたので、夜はそこへ通学していた。小工場の物置を改造したような所に黒い机が四、五十並べられ、靴や板裏ばきの儘、本所界隈の徒弟や子弟が集まって来る。工芸といっても、図工の養成が主で、初歩の図案、幾何など、単純な課目に過ぎない。それに生徒のだらしの無さ、ぼくは失望にくるまれて、転校などを思っていた。
そんな矢さきにYさんの耳よりなすすめだった。苦学というのは、身一つの学問へ多年をかけることで、金を得る道ではない。ぼくの義務は金をうる早道に就くことだった。母も後の苦しみは承知でぼくを東京へ出してくれたのだが、今は貧苦にひしがれかけているのだろう。ぼくはYさんの世話で、その後まもなく、浅草三筋町のT氏の許へ、一年ぽっきりの約束で、輸出金属象嵌の下絵描きの徒弟に住みこんだ。