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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
松火や提灯の火なのである。飛天夜叉組と姥の眷族と、ここの藪地に住居していて、双方の組に加担したところの、非人や野武士などの大勢が、攻め合い斬り合いしているからであった。で、悲鳴や叫喚や、剣戟の音なども聞こえて来た。
「……その連判状というやつがじゃ……」
と、白い行衣、白い髪に、月の光がこぼれているので、雪の塊りか卯の花の叢、そんなように見える鬼火の姥が、ひそめた物々しい声で云った。
「素晴らしく大事な料物でな。……それだけに六波羅の探題様にとっては、手に入れたい品物なのじゃ」
「なるほど」
と範覚は首を延ばして云った。
「どっちみち宮方へ加担した奴らの、姓名が記してあるだけだろうが……」
「そうとも、それだけに過ぎないのだが、そうして宮方に味方している、京都在住の者どもの名は、連判状がなかろうと、だいたいのところ目星がつき、たいして心配にもならないのだが、諸国諸地方の豪族のうちに、味方した奴らがあるらしく、それだけは連判状がなかろうものなら、かいくれ見当がつかないようなのじゃそうな」
「どうしてそいつらを引き入れたものかの?」
「資朝卿と俊基卿とが、先年諸国を巡られて、そいつらと逢い口説いたからじゃそうな」