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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
生ける白布
並木道には松明の光が、行ったり来たりして織をなしていた。
戦場へ掠奪に行く者と、掠奪から帰って来た者との、振り照らしている松明であった。
おおよそ一里も歩いた頃に、小山の上に造られてある、城めいた建物を中心に、二百軒あまりの人家が立っている、そういう町のような一所へ来た。
ある一軒では武士の群れが、長柄の血のりを拭ったり鎧の千切れをつくろったり、鏃の錆びを落としたりしながら、碗で酒をあおりあおり、今日の赤坂の戦いについて、批評や噂をやっていた。
そうかと思うと一軒の家では、若い美しい女たちが、笛や鼓の稽古をしていた。物売る店があるかと思うと、刀鍛冶の工場などがあった。
露地や小路では男や女が、何やら話し合って笑ってい、犬はその間を駈け廻り、馬は、厩舎でまぐさを食い、子供は喧嘩をして泣いていたりしている。
漢権守の城下であって、元からの家臣はいうまでもなく、掠奪されて来た女たちや、誘惑されて来た不具者なども、この城下に家を構えて住み、各自の生活をいとなみながら、しかも漢権守の監督を受け、めいめいの身に相応した芸や、相応した業を修得し、売られて行く日や派遣される日を覚悟して待っているのであった。