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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
朗らかな団欒
「は、はい」
「頼春をここへ呼び……」
「は、はい」
「彼の口より謀反のあらまし……」
「は、はい」
「云わせて密告させることじゃ!」
「は、はい」
「人やって即刻呼び寄せようぞ」
「は、はい」
と早瀬は手を合わせた。
「嬉しいか?」
「添うてさえ……」
「添うてさえおれれば嬉しいか」
無言で早瀬は頷いた。
「未練! ……が、女心だ!」
閉じた太郎左衛門の眼頭からも、涙がバラバラと膝に落ちた。
この夜小次郎は桂子の館の、奥の部屋で話していた。
朗らかな団欒
どこからまぎれこんだ馬追であろうか、燭台の裾を巡りながら、時々たちどまって鳴いたりした。
鳴く時青い羽根がこまかく顫えた。
桂子と浮藻と小次郎とが、その横でしめやかに話していた。
そうしてこの部屋の出入り口に近い、片寄ったところには大蔵ヶ谷右衛門が、大鉞を砥石へかけて、ゴシゴシと磨いでいた。
右衛門は桂子の股肱の臣で、桂子のためなら水火の中であろうと、笑って平然とはいって行くほどの、忠誠の心の持ち主であり、仁に近いほどの木訥漢であったが、剛勇無双膂力絶倫、二十貫の鉞を揮わせたら、面に立つ者はないほどであった。
それでいて他面諧謔漢で、見かけに似合わぬ多才児でもあり、この道場では桂子に代わって、泣き男だの幽霊女だのの、稽古をつけてさえいるのであった。